パソコンを整理していたら、数年前、仕事をしていてくじけそうになったときに書いたテキストが出てきた。よくもまあ、こんなことを。
朝起きて、道具と弁当を持って家を出て、山に入ります。
環境と折り合いを付けながら、自分で立てたスケジュールに従って、
もくもくと、たんたんと、木を伐ります。
伐った木は運び出します。
事情が許す限り、できるだけ良い木を伐って出荷したいと念じながら、
良い木、悪い木、運びやすい木、変なところに立った木、
いろいろな木を伐ります。
山に入る限りは、そこではいろいろなことがあります。
霧がかかって前が見えなくなったり、
冷たい雨に降られたり、
暴風に見舞われたり。
もちろん雪が降ることもあります。
熊に出会ったり、蜂に襲われたり、
猪の突進をかわすのに冷や汗をかいたり、
狐にばかされたり、狸にいたずらされたり、
そんなことは日常茶飯事と心得ます。
はたまた、時には山崩れに遭って、山火事に遭って、
仕事も何もめちゃめちゃになり、
ヒーヒー言いながら手ぶらで帰って来るようなこともあります。
谷に落っこちたり、弁当を落としたりなんていう、
情けないこともあります。
でも、思いがけず美しい花を見つけたり、
おいしい茸が手に入ったりと、いいこともあります。
そして何より、素晴しい木を、手際よく、傷つけずに伐り出し、
買い手に褒められ、喜ばれた時ほど嬉しい時はありません。
その嬉しさが忘れられないために、
不快なこと、恐いこと、危険なこと、情けないこと、
またそんな目に合うのだとわかっていながら、
今日もまた山に登るのです。
もちろん、木に対する感謝、木があることに対する感謝、
山があることに対する感謝の気持ちは忘れません。