題名はわからないけれど、米国の映画の1シーン。あるお父さんが電報を受け取る。それを読み終えて、お母さんに一言。“Ted bought the farm.”(テッドは農場を買ったよ)。それでお母さんが泣き崩れる。……なんで? これは昔読んだ「英会話上達法」(倉谷直臣著、講談社現代新書)に書いてあった話で、事情を知ってものすごく感心した。
米国人にとって、農場を買うことは、生涯の目標、夢であること。手頃な農場は1万ドルぐらいで買えたこと。戦死者の家族には、1万ドルの小切手が送られるものであったこと。
したがって、“Ted bought the farm.”は、「テッドは戦死した」という意味になるとのこと。
さらに、飛行機事故などで亡くなった人への賠償金は、実際の金額が1万ドルでなくとも、“ten-thousand dollar check”と言い、犠牲者は“He bought the farm.”と表現されるという。
面白いでしょう? と言ったら不謹慎か。興味深いでしょう?
この本は1977年に出たもので、今は絶版のようだけれど、このほど30年の時を経て続編「NKの新・英会話上達法」(プレイス)が出た。
でも、やっぱり感心するのは、あまねく米国人の夢が農場主になることだったということ。最近は少し事情は変わっているようだけれど、気持ちとしては今も通用するらしい。
日本とは農業や農地に対する感覚と事情がだいぶ違う。誰にも共通している(と思える)願望があることも。