Which nese are you, Chinese or Japanese?

ボストンにて。 想う伝える
ボストンにて。

夏頃であったか、飛行場の書店をうろついていたら、外山滋比古先生の新刊「人に聞けない大人の言葉づかい」(中経の文庫)が並んでいて、思わず手にとった。外山滋比古先生と言えば、私たち世代にとっては国語の試験でおなじみの先生。「次の文章を読んで問いに答えよ」の次の文章によく使われていた。

ボストンにて。

ボストンにて。

 だから、試験対策の下心もあって、当時外山滋比古先生の本はなけなしの小遣いをはたいてよく買ったもの。で、読んでみると、言葉について非常に厳しい方とわかる。言葉に厳しいだけでなく、人にも厳しそう。一度もお会いしたことがないながら、その厳しそうな様子に対する恐れと、よく読ませていただいた親しみとで、どうも“敬称略”とはできず、ここでも「外山滋比古先生」と書かせていただいております。

 願わくば、先生がインターネットなどお使いにならず、このブログなども発見されませんように。

 外山滋比古先生は、実は怖いばかりでなく(失礼)、実は優しい人でもあると拝察しております(緊張してうまく書けない)。それは、とても難しい問題を論じていらっしゃる一方、この「人に聞けない大人の言葉づかい」や、「読書の方法」(講談社現代新書)といった、安価で軟らかいシリーズでも本を出されているところに表れている。若い世代を心配して下さっている心からなのだと思う。先生は1923年生まれ。そのご年齢で、なおそのお心をお示しになっていることに、ありがたさとうれしさを感じる。

 「人に聞けない大人の言葉づかい」は、軟らかい本です。「はしがきにかえて」にも、先生自らが「気楽に読んでいただければありがたい」と書いて下さっています。

 でも、読むと、やっぱり厳しいことがいっぱい。あれもできていない、これもできていないと恥ずかしくなること請け合いです。ああ、恥ずかしい。44年間何をしてきたのかしらん、私は。

 でも、もちろん「気楽に読」めるところもたくさんあります。その一つの、岡倉天心のお話が面白かった。こんなお話。

 米国で、ボストン美術館の中国・日本部長になった岡倉天心。ある日街を歩いていると、「いかにも北部のアメリカ人らしい白人が近づいてきて」からかわれた。

Which nese are you, Chinese or Japanese?
(おまえさんは、どっちの「ニーズ」だ?「チャイニーズ」か?「ジャパニーズ」か?)

 岡倉天心、すかさずやり返した。

Which key are you, donkey, monkey or Yankee?
(あなたはどの「キー」ですかね。「ドンキー」?「モンキー」?「ヤンキー」?)

 してやったり。ちなみに、ドンキーはロバだけれどもバカの意味あり。モンキーもサルなのでバカにしている。そしてヤンキーは、米国北東部の白人を言う言葉で、ときに蔑称。

 テキはどんな顔をしたんでしょうね?

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